小儿肝胆外科学(第2版)
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第1版序

主編集者の董蒨教授、副主編集者の李龍教授および肖現民教授による《小児肝胆外科学》が刊行されるに当たり、序文を寄せる機会をいただき、誠に光栄です。

わたしも日本の小児外科の創設期から小児の肝胆、膵、脾の外科に興味をもち、1961~1963 年にかけて、南カリフォルニア大学(USC)付属ロサンジェルス(Los Angeles)小児病院で膵線維性嚢胞症(Cystic fibrosis,Meconium ileus)の研究と臨床に頭いたしました。 その成果は第一回日本小児外科総会(1963)で初代若林会長のご推挙を受け、教育講演として発表することができました。 しかし、Cystic fibrosisは東洋人種には極めて稀で、日本の全国調査を継続しましたが、今日までに50 例足らずの集計ができただけでした。 しかし、東洋人種には存在しないという定説を覆すことができました。 一方、胆道疾患は明らかに東洋人種に多く、帰国後はこの疾患の研究に力を入れました。 特に、胆道閉鎖症と胆道拡張症は欧米と比べて断然多く、日本の小児外科医の研究が欧米をリードしています。

胆道閉鎖症は治療が困難でしたが、東北大学の葛西教授の肝門吻合術で黄疸が消失する例が多くなりました。 しかし、全例完治するとは限らず、肝硬変にまで進行して肝移植の対象となります。 日本では京都大学の田中教授の生体肝移植が多数例に成功して世界で注目されています。

一方、先天性胆道拡張症では内ろう造設術で黄疸が消失しますので、予後の良い疾患と考えられていました。 果たしてそうでしょうか? わたしはこれら先天性胆道疾患の手術に際して必ず、胆道と膵管系の術中造影を行ってきました。 その映像を詳細に検討して見ますと膵管と胆道系との合流形態に異常があることに気づきました。 特に先天性胆道拡張症では例外なく合流異常を認めたのでした。 わたしは同僚と共に、日本小児外科学会付設の日本膵管胆道合流異常研究会を打ち上げ、研究を進めて参りました。今年は福岡市で27 回日本膵管胆道合流異常研究会が開催されますが、研究会がますます盛んになり、多方面の研究が続けられています。 ところで、この膵管胆道合流異常は中国ではどうなっているのか深い関心をもちました。

1987 年、わたしは中国医科大学附属第二病院の王慧貞教授のご招待をいただき、中国を訪問し、講演する機会に恵まれました。 この訪問の時、小児胆道疾患の診断用に注目され初めていた小児用十二指腸内視鏡を寄贈いたしました。 当時中国では小児の内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)の手技は普及しておらず、手技習得のため、王慧貞教授は黎明先生を徳島大学に派遣されました。 帰国後黎明先生は多くの小児例にERCPをされて、合流異常を明らかにされました。 この結果は極めて重要で、中国にも膵管胆道合流異常をもつ症例が多いことを証明されました。

1988 年上海医科大学の金百祥教授のところで講演させていただく機会に恵まれました。 このとき、初めて青島大学医学院から上海医科大学の金教授のもとで国内留学されていた董蒨先生にお会いしたのでした。 わたしの講演に興味をもたれて、徳島大学に留学を熱望され、留学生として、わたしの下で勉強に励まれました。 上海医科大学で金百祥教授、肖現民、薛崇德、鄭珊先生と撮った写真を今も懐かしく眺めています。

董蒨先生には徳島大学に留学していただき、私ともの第一外科と共同して、膵管胆道合流異常に伴う膵液逆流と経口撮取した変異原性物質との関連について研究を進めていただきました。 董蒨先生の寝食を忘れた熱心な研究の結果、合流異常例では、胆道内に逆流した膵液のため、抱合体の形で無害になって胆汁中に排泄された変異原性物質が、脱抱合されて再び胆道上皮の癌化を促す事を明らかにされました。これら一連の合流異常の病態の研究から、胆道拡張症の治療面では、内ろう造設術は禁忌の術式とされるようになりました。 また、合流異常は胆道系の発癌の原因として注目され、小児期に膵液と胆汁の分流手術をすることが、胆道癌の予防になることもわかりました。 董蒨教授の研究成果は胆道拡張症の治療方針にも大切な示唆を与えています。 董蒨教授は今や中国の小児外科を背負って立つ立派なリーダーの一人となられたことをわたしは誇りに思います。

小児の肝、胆、膵、脾の外科には東洋人種の先天性の胆道疾患は欧米に比べてはるかに多いことが周知のことでした。 日本のほかに、最近十数年間、中国の小児外科の同僚たちも小児の肝、胆、膵、脾疾患の外科の診療と研究に多くの貢献をあげました。 張金哲教授を始め、数多くの中国の同僚の研究成果は国際的に知られています。 この書物は中国の小児外科医にとって、肝、胆、膵、脾分野の必携の書物として愛読されると確信します。 また、一般外科医が胆道癌のような、小児期に発見、注目して分流手術をしていれば発ガンしない膵管胆道合流異常のような先天性形成異常を見逃がさないための啓蒙の書物として愛読される事を希望しながら、小児肝胆外科学の序文とする同時に中国の小児外科のますますご発展をこころからお祈りいたします。

日本国立德岛大学名誉教授

日本胰胆合流异常研究会创始人会长

古味信彦